電通さんと富士通さんがGAFAに牛耳られていると見られているネット上の個人データに一矢報いようとして「パーソナルデータを活用した新しいライフスタイルを提案するライフデザインの検討を開始」した。その取り組みの一端が語られたワークショップだった。
今回のワークショップは、「本活動の一環として両社は、個人に関わる「時間」と「趣向」のデータを活用し、個人にあったライフスタイルをデザインする実証実験を、2019年8月に実施します。本実証実験では、データは自分自身がコントロールすべきという考えのもと、両社が参加者に、自分自身のデータを自分の生活のために活用することを体感いただくため、参加者が利用許諾した自身のGoogle カレンダーのデータを活用し趣味・趣向のデータをマッチングさせてライフスタイルを提案します。」
「また、本実証実験に向けて構築するサービスでは、個人が安心してデータを取り扱うことを可能にする富士通のPDS(Personal Data Store)サービスである「Personium(ペルソニウム)*1」サービスを基盤とし、電通が提唱する「タイムフィリング*2」という考えのもとで富士通が開発したアプリケーションを使用します。」*3ということを体験するものだった。
いろいろハプニングもあったが、自分にとってはGAFAが世界中から集めている個人情報、個人データが個人にとってどういう意味を持っているのかを実感させてもらえるワークショップであった。それがどのようなものであったか、この日、庄司先生が自分を例にして個人データの持つ可能性を示してくれたので、それの一部を紹介しよう。
ここで庄司先生から示されたことは先日の情報通信白書の読書会で考えたこととつながるものであり、読書会の話がどちらかというとマクロや産業レベルの話であったのに対し、この時は個人レベルの話と言えただろう。
話の内容は、もう少し自分の情報を大切にしましょう、自分の情報をプライバーの問題だけでなく、もう少し自分で上手く生かして使うことを考えましょう。そうすると、個人情報の経済的価値が見えてきませんか・・・というものだと僕は受け止めた。
そうなのだ。今のままでは、プライバシーをあまりに重視するあまり、将来、個人情報の持つ経済的価値を見殺してしまい、それが本来持っている価値を所有している本人でさえ死蔵してしまうのではないかという懸念。今で言えば、GAFAに自由に(無料で)使わせていいのかということだ。プライバシーとか、忘れられる権利とかを検討するのも大切なのだが、それの持つ経済的価値をもう少し考えてみてはどうかということだと思う*4。
そこで実際に考えてみようということになる。「定量化する自分」ということで、まずは、日常生活がどの程度定量化されているかを考えるといいだろうということで具体的に考えさせてくれた。
上の写真の通り、いつ(スケジュール)、どこ(地図)、だれ(人間関係)、なに(買い物)の軸で整理してみると、意外とたくさんあることに気づくのではないか。
順不同で自分の定量化の例を上げてみると、会社サイボウズ(スケジュール)、iPhoneカレンダ(スケジュール)、GoolgeMap(行き先)、Facebook(日々の出来事、人間関係)、twitter(日々の出来事、人間関係)、Instagram(日々の出来事、人間関係)、ブログ(日々の出来事)、Amazon・楽天(購買行動)、Garming(ランング等運動、心拍数)、mealog(体重、体脂肪率)、Eight(名刺管理)、乗り換えNAVI等(移動)ほぼ起きている間の行動は何らかの形で記録されている。
これらのデータをまず各分野でなるべく1つに集約して簡潔にすることと、そのデータをさらに連携させるとそこからまたいろいろ便利なことができるようになるのではないかという問いかけだったが、実はこのデータの連携がなかなか上手くいかないという現状。それに対する富士通さんと電通さんの試みというつながりになる。
もっと便利になるはずということで、ここでは、健康、娯楽、人間関係に基づいて具体的に考えた。この日は、それを、ペルソニウムサービスで実体験してみたわけだが、時間が短かったのでそこを実感するまではいかなかったが、庄司先生の話を聞きながらそういうことだったかとピンときたことはきた。
こうやって考えてくると、デジタル経済を成長させるためには、マクロ、産業レベルの取り組みとミクロ、個人レベルの取り組みの両面が必要なのだと思えてくる。GAFAに対抗する云々ではなく、デジタル経済を成長のエンジンにするためにも個人情報の経済財としての可能性、それを可能にするための制度設計がこれからは大切なのではないかと思うのでした。