日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

メモ:日本はITを使いこなせていないのか?

今更ながらだけど一応メモとして書いておく(以前どこかに書いたかも・・・)。

日本の企業は米国や中国に比べてITをうまく使えていない、仕事に取り入れられていないとよく言われたが、そうなのだろうか?という点について、多分、必ずしもそうではないだろうと。

例えば自分の仕事だと、業務のいたるところにITは使われていて、仕事の内容(提案、情報収集、分析、とりまとめ、印刷、製本)で分けてみるとさらにITの浸透度が分かる。あまり変わらないのが提案の部分か。大部分はITのおかげで通常のプロジェクトなら一人でできてしまう。つまり生産性は上がっている。

 

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どの業種、職種でも生産性は飛躍的に上がっているのではないか。そしてそれで何が起こったか・・・いろいろな要因もあるけど、アウトプットの単価が下がったと思う。インプットが小さくなったことでアウトプットの単価が安くなった。なぜだろうか?

同じ品質の商品を少ないコストで生産すれば価格は下がるだろう・・・需要と供給の関係からそうなる。生産性はあがったが、それで増えた生産者余剰は競争で市場に吐き出され、消費者余剰となるというわけ。そうなると単価は下がったけど、企業としての売上げを下げるわけはないので、より多くのプロジェクトをこなすことになる。これの繰り返し。実際、最近の日本経済はデフレと言われ、いろいろな価格指数は減少基調だ。

下の関係式で言えば、分子は一定で分母を一生懸命小さくして生産性を上げてきたことになる。これが日本のビジネス界で起こっていたこと。付加価値(GDP)という側面で見れば投入を小さくすることで維持するので大きな成長にはならない。当然、生活は、ITによりいろいろ便利にはなっているが、生活水準が向上するという感覚にはなりづらい。

 

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一方、アメリカはどうだったかというと、競争社会なのでそういう分母を小さくする努力もしていたであろうが、分子を大きくする方向でITをビジネスで活かした。新しいビジネスはそれで代替される部分はあるとしても、結果としてより大きな付加価値が新しく生み出された。その象徴がGAFAGAFAは新しい市場を開拓した。つまり分子の産出が大きくなった。日本にはこれがなかった・・・失われた20年。

そして次に来ている中国・・・アメリカとは違う意味で中国も産出を増やしているし、今後はアメリカと同じ土俵で、新しい技術を使って新しいビジネス、市場を開拓して成長していくだろう。

日本はITを使いこなせていなかったわけではなく、新しいアウトプットを生み出すために使えてなかったということではないかと・・・そうなると、米中のようなアウトプットを増やすようなビジネスが日本にできないのはなぜか?ということが次の疑問としてふわっと出てくる。

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

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イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

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