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新井紀子著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』②:基礎的読解力を意識する

少し前、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の記事を書いた。その中では、AIの可能性とともに現代は文章を理解できないという危機的な状況にあることを紹介したにとどまった。実際に何をすべきかについては触れなかった(当然、本の中には書いてある)。AIの普及が予想される今の時代、これからはAIにできない能力を伸ばすことが、将来の自分の労働機会を確保することでもあるのだが、そのために基礎的読解力がいかに必要かが明らかにされている。

mnoguti.hatenablog.com

ではそれは具体的にどのような能力なのだろうか。本書から抜き出しておこう(主に第3章)。

ここで明らかにされたことは、がむしゃらに勉強してもダメだということ、自分の読解力の強い弱みをしっかり認識してそれを鍛えることが必要だということ。文章が正確に理解できれば、すべての勉強の難しさは緩和される・・・勉強の効率も上がる・・・ということだ。

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ではその能力とは何か・・・本書によると以下の点になる。

  1. 係り受け:主語と述語の関係や修飾語と被修飾語の関係
  2. 照応解決:指示代名詞が何を指すか
  3. 同義文判定:2つの違った文章を読み比べて、意味が同じであるかどうかを判定
  4. 推論:文の構造を理解した上で、生活体験や常識、さまざまな知識を総動員して文章の意味を理解する力
  5. イメージ同定:文章と図形やグラフを比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力
  6. 具体例同定(辞書・数学):定義*1を読んでそれと合致する具体例を認識する能力

これら6つの能力のうち、最初の2つ、係り受けと照応解決は最近のAI技術でも十分こなしすようになったそうだ。残りの4つはAIは苦手だ。後半の3つは全く歯が立たない分野ということ。将来、AIが普及した時、その煽りを受けないで自分の労働機会を確保するためには6つのうちの3以降、特に4から6の能力を鍛えておく必要があるということだ。

このように、本書での指摘は、AIにできることできないことを明らかにした上で、AI時代に鍛えるべき能力は何かを述べている。そしてその能力を含め全体としての読解力の差が実は勉強の能力の差をもたらしていることも明らかにしている。

授業や受験、その後、大学に入ってから、社会人になってから、人は一生勉強していくが、その効果を最大限にするためには、まず基礎的読解力を鍛えることが必要ということだ。しかし、本書は、その基礎的読解力をつけるための方法、あるいはその差がどのような環境や取り組みによって出てくるのかはまだ明らかではないということも述べている。一方で、これに気づいた中学校の取り組みで成績が大きく伸びた事例も紹介し、何かしらの解決策はあるはずだとも。

本書を読んで、自分の経験と合わせると、基礎的読解力をつける、あるいは鍛え直すためには、多様な経験と多様な読書の仕方(速読や精読、あるいは色々な人の文章など)と量、特に読書の仕方の工夫が必要なのではないかと思った。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち
 

今回、この記事を書いたのは、自分も基礎的読解力に不安を持っていて、それでいつでも振り返れるようにしておきたいと思ったから。今、振り返ってみると、確かに自分はAIが苦手な4つの能力が程度の差はあるけどどれも弱いと思う。AI技術が本格的に普及する60代、70代、このままでは自分は職にあぶれて残りの人生を送ることになるのか・・・どんなもんでしょう。

皆さんも他人事ではないでしょうw

*1:定義には、国語辞典的な定義と数学的な定義の2種類がある。