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結城浩著「数学文章作法 基礎編」:自分の考えを伝えるには読者を考えながら書くことが大切

分かりやすい文章を書くというのは意外と難しいものだ。自分も職業柄文章を書く機会は多い方だと思うが、満足のいく文章を書けたときはその達成感はかなりのものだが、それで相手に自分の意が通じているかといえば、それはまた別の話ということになる。自分が書きたいことと、それが相手に伝わっているかはまた別次元であり、文章をコミュニケーションの手段と位置付ければ、自己満足で終わらせてはいけないというのは自明の理。

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しかし、相手に伝わる文章を書くにはどうしたらいいだろうか。それについて書かれたのが本書、数学文章作法基礎編だ。

数学文章作法 基礎編 (ちくま学芸文庫)
 

相手に伝わる文章、それを実現するには、いかに「読者のことを考える」ことを大切にするかということが本書で著者が言わんとすることであり、それは最終章に全体を振り返る形で簡潔に述べられている。

章立ては以下の通り。

  • はじめに
  • 第1章 読者
  • 第2章 基本
  • 第3章 順序と階層
  • 第4章 数式と命題
  • 第5章 例
  • 第6章 問いと答え
  • 第7章 目次と索引
  • 第8章 たったひとつの伝えたいこと

各章は、その「読者のことを考える」ということがどういうことかが文章の作成過程に沿って、ふんだんな例を挙げながら解説されている。よって、文章の書き方について考えたことがある人にとっては先刻承知が多々あるかもしれない。自分もそうなのだが、そうかと言って本書に書かれていることが全て実践できているかというとそうではない自分の文章に気づかされる。文章の書き方、その大切さについて、そういう振り返りをさせてくれるだけでも、本書を読む価値があるだろう。

一方、文章が書けないと日々悩んでいる人にとってはぜひ読んでみてほしい一冊ということになるだろう。読み手のことを考えながら、本書の各章で解説されている点について考えながら書くことによって読んでもらえる文章になる。その時、注意すべきは読んでもらえる文章は決して一回の書き下しでは書けないということだ。何回も遂行することによって各章に書かれているように文章が磨き上げられていく。その手間を惜しんではないけないということも本書は教えてくれる。

あくまでも「読者のことを考える」という一点から自分の文章を作成していく。それの繰り返しで、文章が集まり段落になり、それが集まり章になり、章が集まり作品としての論文や書籍が出来上がっていく。コミュニケーションとしての文章・・・自分の言わんとすることを正確に相手に伝えたいのならそれ相応の手間がかかるのはそういうものなのだという当たり前のことを再認識させてくれる。

書くことへのこだわり・・・再認識(最近のパワポ文化は如何なものかと思う)。

数学文章作法 推敲編 (ちくま学芸文庫)