タモリについては今まで2冊の本を読んだ。それがこれ。
最初の樋口氏の本は正直って期待はずれだった(樋口さん、ゴメンなさい)。
その欲求不満を持ち続けていた時に見かけたのがこちらの戸部田氏の一冊。こっちは面白かったね。
戸部田氏の本を読んだ時、満足する面白さだったのでもうタモリ関係はいいかなと思ったが、「戦後ニッポン」ということで、着眼点に惹かれて手に取ってみた。
本書の内容は、簡潔に言うと、終戦の年に生まれたタモリの半生を通して日本の大衆文化を浮かび上がらてみたといったところだろうか。タモリのタレント人生を補助線として日本の大衆文化を浮かび上がらせていて、それはそれで面白い。新しい発見というよりは改めて考えさせてくれるって感じ。
構成は、序章から始まり7章建てで終章で終わるというもの。具体的には以下のとおり。
- はじめに
- 序章 ”偽郷”としての満州
- 第1章 坂とラジオ、そしてジャズー祖父母に育てられて
- 第2章 大学紛争とダンモ研狂騒曲ー森田一義から「タモリ」へ
- 第3章 空白の7年間ーボウリングブームのなかで
- 第4章 ニッポン最後の居候ータモリ出現
- 第5章 テレビ界「お笑い」革命
- 第6章 ”変節”と”不変”ーフジテレビの絶頂と「笑っていいとも!」
- 第7章 「リスペクト・フォー・タモリ」ブームーテレビは終わらない
- 終章 タモリとニッポンの”老後”
- おわりに
第4章までが面白かった。今のタモさんが出来上がる背景というかその製造過程というか、どこか第三者の目でいつも世の中を見ている彼がどのように形作られてきたか・・・それがなんとなく分かる。
タモさんを中心に、戦後のお笑い史という側面もこの本にはあると思う。萩本欽一らの世代が第一線から退いた後、タモリ、タケシ、さんまの3人は30年間第一線で働き続けている・・・新陳代謝がその部分では止まっているのだ。ある意味、この異様さはどういうことなのだろうか。3人がおかしいのか、TV業界がおかしいのか、大衆がおかしいのか。
参考文献も膨大にのぼる。タモさんの研究(というかタモさんを通して日本社会を研究)しようとする人はすごく参考になるだろう。
力作だと思う。