先日のイケハヤさんの著書に関する記事にもあったが、世の中、社会の流動性を高める方向に行きつつある、あるいは、行かざるをえない状況になっているように見える。その流れを方向づける一つの仕組みになるであろうと思われるのが、クラウドソーシングだ。
本書は、クラウドソーシングプラットフォームを提供する下記の会社・・・
クラウドワークスという会社の経営者である吉田氏が書き下ろしたものだ。
内容は以下のとおり。
- はじめに
- 第1章 「個」の時代が始まった
- 第2章 クラウドソーシングの仕組み
- 第3章 商習慣をReデザインする
- 第4章 21世紀の新しいワークスタイルの到来
- 第5章 新たなビジネスモデルの先にあるもの
- 資料編 クラウドソーシングを活用する
- おわりに
なぜクラウドソーシングなのかと言う点からクラウドソーシングの仕組み、その長所・短所、活用の先進事例、そして将来の見通しまで網羅的に記述してある。文体は柔らかく、行間も広いので楽に素早く読めるであろう。自分らの身近なことなので頭に入るのも早いはずだ。
クラウドソーシングに対する見方は、短所等も記述してあるが、そこはクラウドソーシングプラットフォームを提供している会社の経営者が書いているので、楽観的にまとめてある。例えば、一番気になったのは報酬面。現状の秩序を壊し、安く発注できるというのが一つの売りになっているのだが、それはワーカー側の報酬の縮小をもたらすのではないかという点については、ワーカー側にもグレードができて、プロとセミプロ、新参者ではそれぞれ評価が異なり、報酬も異なるという見通し、そしてプロの報酬は影響を受けないだろうとしている。
果たしてそうだろうか。発注者側とワーカー側の力関係がどうなるのか・・・そこの仕組みをどのように構築するのかでいかようにもあるところだと思う。そしてこれまでのビジネスの経験からするとやはり発注者側がどうしても強くなるように思えてならない。クラウドソーシングという仕組みを社会に受け入れてもらうにはまず使われなければならないわけで、それには発注企業がどのように対応するかで決まる。どうなるのだろうか。
想像されるのは、一部の高評価のワーカーとその他大勢のワーカーという2極化だ。あるいは高評価のワーカーであっても報酬はそれほど恵まれないという時代になるのかもしれない。そうならないためにクラウドソーシングという新たな仕組みをうまく機能させるために社会的な制度をどのように構築していくのかはこれから試行錯誤が本格化するであろう。そのような仕組みをいろいろ試行しているところもクラウドワークスの営みとして大切な部分であり、業界を引っ張っていく企業としてこれからに期待したいところでもある。