日々の仕事や暮らしの中の視線で「おやっ?」と思うことを軽いタッチで描いている。吉崎氏が長年ネット上に書き綴ってきた溜池通信から選りすぐりを選んで書籍化した一冊。目次は以下の通り。
- 会社生活の変容
- ビジネスの極意
- 長期低迷時代をゆく
- いかにもこれが経済
- 食こそ経済なり
- 日本ってどんな国?
- 数字に弱い
溜池通信 いかにもこれが経済 吉崎 達彦 日本経済新聞出版社 2010-04-16 by G-Tools |
まえがきによると、この本の元となった溜池通信が始められたのは、1999年8月だそうで、それから現在に至るまで続いている。当時は内緒でやっていたものが、そのうち有名になり、現在では独自ドメインを取って続けられているということだそうです。
語り口は軽妙で、もと商社マンとしてのいろいろな経験談や他人の経験談を自分の視点から優しく切って見せる。文章は軽く読めるように書いているが、そこに書いてある一つ一つのテーマをよくよく考えてみると、いろいろ考えさせてくれる。
僕が興味をひかれた項は以下のとおり。
- ルーズネスは大事:無駄(の時間)も大事だということ。昔、僕の職場でも夕方になるとなんとなくみんなが集まってくる場所があった。それは会社の中の共用スペースでそこには夕刊各紙がその時間になると置いてあり、みんなそれを読みに来るのだ。そうするとそこでいろいろ談義が始まる。仕事の話から始まり、いろいろな話に広がっていく・・・そしてしまいには「ちょい飲み」に行こうなるのだ。はたから見てると無駄(あるいはサボタージュとみられていたかも)話と見られていたかもしれないが、これが結構、みんなの情報交流の場になっていたと思う(たぶん今でも社内のどこかではこういうのが残っているのだろうけど、僕の周りではほぼ皆無・・・涙)。
- ベンチャー成功の秘訣:ベンチャーとは言わず、何か新しいことをやるときに参考になる。
- 作家は哀しい:これからのコンテンツの時代を考えるときの参考になる。
- 知恵を売る仕事:シンクタンクのビジネスについての勘所・・・なるほどと思わせる。ここだけで、本書を買う価値が僕にはあった。
- 時代を超えて愛される秘訣:これも何かを作るときに参考になる。
- 市場メカニズムとは何ぞや:情報が瞬時に行きわたる時代に市場メカニズムに何が起こるか、市場メカニズムに多様性が大切なわけを簡潔に解説。
他にもいろいろありましたが、このあたりにしておきます。読み物としては軽く、数時間もあれば読めてしまう。しかし軽く読めるけど、軽く読んでしまってはちょっともったいない・・・という本だと思う。