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長嶋茂雄:野球は人生そのものだ・・・今の日本が忘れたものがある

高校を卒業する時、野球部の監督(先生)が色紙に書いてくれた言葉は、「野球はヒューマンドキュメントである」という言葉ではなかったかと思う。書店で最初に見たとき、「似ているな」と思った。

本書は日本経済新聞の「私の履歴書」に連載された内容を大幅に加筆修正したもので、当然、連載時より中身が濃くなっていて、著者が言いたいことがよりにじみ出ているように思う。野球に対する思い、プロとして考えなければいけないこと、巨人に対する思いなどなど。

長嶋茂雄・・・僕はその全盛期を知らない。僕が記憶に残っているのは、昭和48年ごろ、そう最晩年の長嶋だ。だから僕の記憶には華々しく活躍する姿はほとんどない。思い出されるのは、引退時、第一試合が終わったところで外野を一周した長嶋、そしてセレモニーの長嶋、バッターボックスでバットのグリップを気にしながら構える長嶋ってな具合。

僕にとっての長嶋の偉大さはだからマスコミが後で編集したものがほとんどだ。本書を読むということは、その何が真実で何が作られて伝えられていたかを確認することでもあった。

453216723X 野球は人生そのものだ
日本経済新聞出版社  2009-11-11


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本書の内容は以下のとおり。

  • はじめ
  • 第一章 サード長嶋誕生(見果てぬ夢、母が作ってくれた三つのボール、裏庭の柿の木の下、父が見守った超特大アーチ、鬼のスパルタ教育に飛び込む、月夜のノック、「富士山のような日本一の男になれ」、六大学本塁打記録、砂押監督に叩き込まれたメジャー流)
  • インタビュー:立教大での恩師・砂押邦信が語る野球人・長嶋茂雄
  • 第二章 常勝・巨人の燃える男(栄光の背番号「3」、4打席4三振、二冠の新人王、天覧試合、好敵手・村山実杉浦忠、燃える男の本質、ON砲、東京五輪が結んだ恋、”哲のカーテン”と軌跡のV9、引退勧告、「わが巨人軍は永久に不滅です」)
  • 解説:草創期の日本プロ野球と巨人軍
  • 第三章 伝統の重みとチーム愛(史上初の最下位、起死回生の連覇と「空白の一日」、伊東前、伊東後、優勝こそ巨人の使命、志半ばで「男のけじめ」、浪人十二年、球界の存亡を賭けて、ON砲を知らない世代と、勝つ三連発で遂に日本一、悔いのない監督委譲、ファンに忠義、選手に信義、野球は人生そのものだ)
  • インタビュー:巨人軍代表特別補佐・長嶋一茂が語る父・長嶋茂雄
  • おわりに
  • 栄光の背番号「3」の軌跡

300ページを超えるが一気に読んでしまう。自分が実際に見てきた長嶋は第三章の長嶋だ。当時週刊ベースボールを購入して、巨人を中心にプロ野球を熱心に追っていた時期でもあった。10月8日の中日との最終戦での優勝決定は新宿のしょんべん横町で他のお客さんたちと一緒にモツ焼きに焼酎でラジオからの実況に聞き入っていた。今思い出しても懐かしい。そして先日のNHKでの放送を思い出しながら、常に前向きに生きてきた長嶋という人のすごさを改めて考えさせられた。

第一章と第二章は僕にとっては伝説の部分。やはりもう5年ぐらい早くプロ野球に興味を持っていればよかったなとついつい思うってしまう。日本経済も一直線に成長していた時代、みんな上り調子だった・・・と言ってしまえばそれまでで、今それができないのは・・・もう少しやりようがあるんだろうなと考えてしまう。それが何なのか・・・本書にはその一端が、著書の目を通して描かれているような気がする。

こう考えてしまうのも、著者の野球に対する姿勢、プロとしての姿勢、勝負に対する姿勢、大切にしなければならないものは何かを常に考えて行動する姿、う〜ん、考えさせられる一冊だ。

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