さて、先に進む前に、自然独占性の計測とその限界ということで、とりあえずのまとめをしておきます。
- モード間競争が進展する状況では、ある特定の企業あるいは特定の生産技術に関する自然独占性の計測はどれだけ意味があるのか。
- 競争が進展する状況下でも、市場が効率的か否かは絶えず見守っていく必要がある。
- 自然独占性を計測するには、技術進歩をどのようにとらえるかがポイントになる。世代間競争、技術間競争などを視野に入れて分析のポイントを考えるべき。
- 推定方法は従来のTranslog型は推定結果の信頼性に問題がある場合が多い(それはFlexibleであるがために起こってしまうらしい)。近年の流れは、関数形を工夫した一般化マクファーデンや線形計画法の一種であるDEA法などでの推定が有力であるらしい。推定方法の長短所を把握した上で、複数の方法により分析することが必要(全部一人でやるということではない)。
- 情報の非対称性が存在する場合、規制機関の負担をなるべく減らすような規制メカニズムが必要。どのようなメカニズムがよいかを議論するためにも自然独占性の計測は必要である。
さて、次は技術進歩指標と研究開発論ですが、技術進歩指標については、これまでの自然独占性の部分でも触れてきました。自然独占性の推定のために生産技術の変化を適切にとらえる何らかの指標が必要であるということであれば、それは具体的にどのような指標が適切かについては推定作業をやるときに再度議論すればいいと思うので、ここでは次項では、研究開発論に進みましょう。