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柳川範之:独学という道もある

積読打破と書いたけれど、なかなか忙しい身としては難しい。こういう感覚でいる人は他にもいるのではないかと思う。そういう人にお薦めなのが、柳川先生の書かれた本書だ。一読するといいのではないかと思う。

結局、積読になるのは、僕の場合、気持ちに焦りがあって結果的に全然手につかないということの繰り返しだ・・・と自己分析している(集中力がないというところもあるが)。

本書は学ぶということについて柳川先生の自分の体験がつづられており、独学・・・つまり自分のペースでじっくり取り組むことができる一つの手段として、そのやり方の例が書かれている。日々どうしにかしなければいけないと焦っている人には、本書の内容を確かめながら自分のやり方を見直すのにいいのではないかと思う。

4480688056 独学という道もある (ちくまプリマー新書)
柳川 範之
筑摩書房  2009-02


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例によって構成は以下のとおり。

  • 第一章 道はたくさんある―高校へは行かないという選択
  • 第二章 こんな勉強をやってきた―大検合格法
  • 第三章 いつでもやり直せる―通信大学から研究者の道へ
  • おわりに

柳川先生と同世代の人間の読後感は、そうなんだよなぁ〜というものと、本書には書かれていない苦労がどれほどあったのだろうというものだ。

自分のこれまでを振り返って見ると、小学生の頃は科学百科事典(もちろん小学生でも読めるようにカナが振ってあるもの)などを買ってもらい、宇宙のことや気象のことを調べる・・・というより、その項目を見ることが好きだった。光が1秒間に地球を7周半することや、その光でも太陽まで何分という時間がかかること、その光が1年間で届く距離が1光年という単位で、太陽系以外の恒星まで何光年もかかるということを知ったときは不思議な感覚にとらわれたものだった。

だから僕は中学、高校と進み、数学が苦手になるまで、将来は宇宙物理学か素粒子のことを勉強したいと思っていた。それが社会科学の人間になったのは、高校で大学の進路を決めるとき、数学が苦手だったので、自分も担任も何も迷わず文系に進んだためだ・・・この安直な選択。

大学を選択するときは、大学になぜ行くのか、何を勉強するのか、あまり良く考えなかった。よって受験勉強もするはずがなく、浪人・・・そして運良く大学(政治経済学部だった・・・この学部を選んだのもラッキーだったと思う)に拾ってもらい、そこで教養課程の大学の講義を受けて、内容が高校までとは違いすごく面白かったことにびっくりした。そのときに漠然と将来は大学院に行って、研究者の道を歩みたいと思ったのだと思う。

高校では本当に勉強しなかった。僕の行った高校は受験校ではなかったけど、やはり受験を意識した授業内容で、受験のためだけの勉強がなんとなく怪しいように思えたからだと今考えるとそう思える。予備校も午後の単科しかとらなかったし、毎日、オールナイトニッポンを二部まで聞いて、昼まで寝てそれで午後予備校に通うなんて生活だった。

じゃあ、高校で何をやっていたのかというと野球漬けだった。野球も実力はB級の高校だったが、今考えると高校野球での経験はいまだにいろいろと役立っていると思う。勉強以外で役に立っていることと言えば、もう一つ、学生時代に経験したスーパーマーケットでのアルバイト。ここでいろいろな人と知り合いになれ、商売の仕方とかを知ったような気がする。

大学院では、修士の時代は一生懸命勉強したけど、博士課程の時代はあまりしなかった(ここは今でも後悔するところ)。それでも今の会社に拾ってもらい、今の僕がいる。とりあえずは会社では役に立っているのだと思うので、こんな適当な生き方をしていてもどうにかなるのかなと思ったりする。

それで今は順風かと言うとそうでもない。自分も今、ある意味、閉塞感を味わっており、そこを突き破りたいけど、もう一つ突き破れない自分がいたりする。

柳川先生のこれまでと自分のこれまでを比較して一番思うのは、自分は目標をはっきり持っていなかった生き方をしてきたということ・・・否、もう少し正確に言うと、目標がはっきりしなくてもその局面で自分なりに考えて選択していればよかったのだが、僕はそれをしなかった。要するに、周りの友達が右に行くから僕も右に行くかという具合に主体性のない行動を取っていた。

なんでそうなってしまったのかはいまだに謎だが、高校以前に人との付き合いがあまり好きではなかった(今でも苦手だ。一歩間違えれば引きこもりになっていたと思う)というところが影響しているのかと自分で考えたりしている。要するに甘ったれだったんですね。

さて、先生の本だが、この本は、当然だが、別に受験のノウハウを伝授するための本ではない。ちょっと勉強や仕事で迷っている人たち(よって中高校生ばかりでなく社会人も含め)にもう少し肩の力を抜いて自分を見つめなおしてみたらどうでしょうというアドバイスの本だと思う。

日本の経済社会は今いろいろ大変な状況だ。皆が皆、被害者になってしまっている感もなきにしもあらずの今日この頃だと思う。こういう閉塞感漂う中に生活していて、肝に銘じておかなければいけないと思うのは以下の文章。

・・・一方で成長しなくてもいいかというと、残念ながらそういうわけにはいきません。もう成長せずにこのままいけばいいんじゃないかという感覚をお持ちの方が多いと思いますが、それはそういうわけにはいかなくて、やはり経済とか世の中と言うのは、立ち止まることはできないんです。・・・

じゃあ、そういう社会にあって自分をどう位置づけていくのか、それは人に頼らず自分で考えるべきことだろう。それこそ独学でやらなければならない。

いやぁ〜、ながながと書きました。誰か最後まで読んでくれる人はいるんだろうか・・・爆

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