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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

笠信太郎:”花見酒”の経済

古い本だ。最初に出版されたのが、1962年。僕が持っている朝日選書の版が出たのが76年。(ちなみに僕が購入したのが大学4年生のころ1985年の9月・・・つまり今から20数年前。)

だから書かれている内容は60年ごろの日本経済の成長についてだ。日本経済の当時の状況に対する笠さんの危機感から書かれたものである。この危機感は、当時、高度経済成長期に入っていた日本経済の成長が根拠なき成長ではないかということがそもそもの疑問点であったことが本書を読んでいると分かる。今の言葉に置き換えれば、日本の高度経済成長はバブルではないかという危機意識だ。

B000J9T35U “花見酒”の経済 (1976年) (朝日選書〈60〉)
笠 信太郎
朝日新聞社  1976


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内容は経済の急成長とその成長を可能にした信用膨張とその背後にある企業と市中銀行と日銀の関係に対する危機感、フロンティアの喪失とそこからくる過当競争の問題など・・・それからもう一つ、その状況を分析する上で重要な道具となる経済学に対する問題提起も書かれている。曰く、国によって時代によって変わる経済を分析する道具としての経済学が輸入学問である現状を考えたときの限界、そして日本独自の経済学の必要性。

科学としての経済学は、理論としての一般性を追求するが、一方、応用としての経済学はその応用場面での個別環境を考慮しなければ有意義な分析はできないというところか。そういう点では、日本独自の経済学の必要性というよりは、日本経済を分析する上で、既存の経済学を応用する際に考慮すべき点をしっかり認識する必要があるということであろう。

今という時代だからもう一度読んでみるのもいいのではないかと思う。

そもそもこの本を知ったのは、学部4年生だったとき金融論の講義で担当教授の天利長三先生が薦めてくれて購入したものだ。それからずーっと積読になっていた。それから当時の講義で覚えているのは、「利子というものは怖いものだということをしっかり頭に入れておくように」との言葉かな。正確ではないけれど、そういう趣旨のことを講義で話していた。

金融市場の危機に端を発した今回の世界経済危機。同時不況からデフレ経済への突入が現在懸念されているが、20数年後に先生の言葉を改めて思い出した次第。

ところで書名になっている花見酒とは、古典落語の一つで、2人の男が花見でにぎわう向島で酒を売ってひと儲けしようとして、その酒を自分でお金を払い飲んでしまうという内容だが、その支払うお金が最終的に元の金額しか残っていないというところに面白さがある話だ。

この話は読んでみる・・・聞いてみるかな^^・・・と分かるように、今の資産バブル経済の話に通じるものがある。米国の住宅市場で行われていたのは、花見酒のストーリとだぶる。

B00005FMCU NHK落語名人選 (21) : 六代目 春風亭柳橋
春風亭柳橋(六代目)
ポリドール  1990-05-25

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アマゾンで調べてみると春風亭柳橋さんのCDに入っているらしい。






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