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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

依田高典:ブロードバンド・エコノミクス

情報通信分野の競争政策とそれにかかわる実証分析で意欲的に取り組んでいる依田高典氏(京都大学)の新著だ。

今、他の書籍とともにアマゾンに注文しているところなのでおっつけ入手できるだろう。

4532133289 ブロードバンド・エコノミクス―情報通信産業の新しい競争政策
依田 高典
日本経済新聞出版社  2007-03


by G-Tools

書籍名の副題に「情報通信産業の新しい競争政策」とあるので、この点について注目しながら読んでみようと思う。

依田さんは日本の情報通信分野に初めて競争評価プログラムが取り入れられたとき、総務省から委託を受けてブロードバンド市場について、本格的に離散選択モデルを用い、市場分析を行ったことで注目された。(立ち読みしてざっと目次に目を通した感じでは、恐らく本書はそれ以来の関連業績の総取りまとめを行ったものとして位置づけられるのではないかと思う。)

情報通信市場の競争政策を考えるにあたって、本格的な実証研究を取り入れながら議論する契機になるかと思ったが、部分的には進んだものの、さらなる実証研究における議論の高まりという視点で見ると、現状ではイマイチだなと思ってしまう(情報通信市場をテーマにした実証研究が格段に増えたのも事実だが)。

それはいろいろな要因があろうと思う。例えば、日本では経済学者の絶対数が少ないとか、その中でも産業組織論や競争政策分野で実証研究をしている学者、研究者となると、さらに少なくなる。また詳細な分析をするためにデータを取得するコストが高いとか、数字が一人歩きするのを嫌う傾向があるため実証研究には後ろ向きにならざるを得ないとか。

依田さんは今回本書を取りまとめることによって、情報通信市場の経済分析に一区切りをつけたのだと思う。今後の彼の活動は情報通信分野から少し距離を置くことになるのであろか?

数少ない研究者の一人であるので、是非、今後も情報通信市場の分析を続けて欲しいものである。

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