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小説・古今亭志ん朝―芸は命、恋も命

志ん朝さんのファンになったのはここ6,7年のことだ。

それまで古今亭志ん朝さんの存在は僕の中ではそれほど大きいものではなかった。いや、ほとんどなかったと言った方がいいだろう。永谷園のお茶漬けの宣伝に出ている和服をきたおじさんぐらいのイメージ。もちろん志ん朝さんの落語を聴いたこともなかった。

それが大きく変わったのは99年ごろだったか、大学で非常勤講師をやることになったとき、人前で話すのが苦手でだった僕は何を思ったか、落語を聴いて勉強しようと思ったわけです。

それで落語を聞き始め、その中にいたのが志ん朝さんでした。


4776803364 小説・古今亭志ん朝―芸は命、恋も命
金原亭 伯楽
本阿弥書店  2006-12


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この本は同僚の噺家さんが志ん朝さんのことを小説として、その人柄、生き様について書かれたものです。噺家さんが書いただけあって、文章は小気味よく、志ん朝さんの台詞のところは、志ん朝さんの声が頭の中の遠いところに聞こえてきます。

面白い本です。半日、早い人なら数時間で読み終わってしまうかもしれません。それほど一気に読ませる小説です。

内容は副題にあるとおり、芸の話と恋の話ですが、年齢とともに自分の立場が変わっていき、それを考えながら志ん朝さんが自分のため、周りのために考えて行動している様は、一流といわれる人は決して独りよがりにはならないものだし、孤立もしないものだと考えさせられます。

それからなるほどと思ったのは、志ん朝さんは、落語だけでなく、役者としてもかなりのものだったということ、あと、踊りなどそのほかのいろいろなことをやっていて、それをすべて自らのものにして、自分の芸を高めるのに役立っていたということでしょうか・・・無駄なことはないんだなあ、無駄にしてしまうのは、その本人の考え方が悪いからだと改めて思った次第です。

この本で印象にのこった一文としては、「人間自分で気付かなければだめだ」という部分でしょうか。

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この本にも登場する円楽さんが、25日、高座から引退なさると言われたそうです。

う〜ん、この本を読んだ直後だけに何ともいえない・・・複雑な心境。