日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

男子の本懐

この本を買ったのは、奥付の日付を見ると、1985年12月となっている。20年前、学生だったとき恐らく大学の生協で買ったものだ。

当時、どういう動機でこの本を購入したのか思い出せない(当たり前か^^)が、それから20年後、僕の目に留まり、読欲が沸き起こった。これは最近の読書傾向と当然無関係ではない。下山事件白州次郎、日本で一番長い日を読んで日本の現代史に興味を持つようになったからだ。

4103108134 男子の本懐
城山 三郎
新潮社 2002-01-29

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内容は、浜口雄幸井上準之助という2人の政治家を描いたものだ。二人の生い立ちと金解禁を中心とした政策実施過程の中での二人が描かれている。最期は二人とも非業のうちに倒れ、志を遂げることはならなかった(彼等の死の背後には、単なる暴漢による犯行ではなく、誰かの意思が働いていたのではないかと疑いたくなる)。

中学や高校の日本史で勉強したと思うが、当時日本の近現代史は好きではなかったこともあり詳細は覚えいていない。印象では「金解禁」は失敗だったという評価ではなかったかと思うが、本書には内閣周辺の関係者(官僚、政治家、財閥、等)が近視眼的ないし自己中心的に動き、その動きを押さえ込みながら実施された過程などが書かれており、政策そのものが失敗だったのかどうかはすぐには分からない。

井上は日銀出身で金融のプロだったし、その彼が十分に検討を重ねて実施した政策だ。当時としては最善の政策ではなかったかと想像される。実際、浜口も井上も相当の苦労を国民にかけることは承知の上だったし、だからこそ官僚の減給措置などを率先してやろうとしたのだろう。

問題だったのは実施した以上貫徹しなければいけなかったのに、政友会内閣になったとたんに即日禁止にしてしまったことだろう。これにより事態はよりひどくなったというような印象を受ける(本書ではあまり詳しくは書いていない)。

この背後には、世界の情勢から日本経済を先読みした投機屋の動き、投機屋の背後にいた財閥、財閥と結びついた政友会、枢密院軍縮に反抗する軍部などあまりにも金解禁からの再離脱により自分らの短期的な利潤を高められる輩がいて、その輩たちの利益を最大化するために再禁止されたように見える。

彼らは情報量という面からしてもマスコミを利用出来る立場にいたであろうし、マスコミは意図してか意図せざるかは別として彼等に都合のいい記事を国民に提供することとなったように見える。本来は金解禁の意義を明確にし、その上で耐乏生活になることを伝えたうえで、実施後は現実の耐乏生活、国内経済の状況等を正確に伝えるべきではなかったのか。マスコミの抱える問題点は当時も現在もあまり変わっていないように見える・・・爆

政策を当初の目的の成果が出るように計画、実行し、貫徹させることの困難さがよく分かる。これは企業レベルでも同様にいえることだろう。

浜口と井上は人生ではまったく違う道を歩んできたが、お互いどのような状況にあっても信を曲げることはせず、地道に努力する姿はう〜んと思わず唸ってしまうほどの気持ちの強さを感じる。

本書を読むと、もう少し専門的にこの頃の政策は今日どのように評価されるのかというところに興味が移ってくる・・・こうなると次に読む本は「経済論戦は甦る」(竹森俊平著)だろうか^^

購入してから20年目に読んだ本・・・あの時読まなくてよかったと自分の積読主義にちょっと感謝・・・笑

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