日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

ネットワークのフリーライダ

今、ネットワーク(ここで言うネットワークは、情報ネットワークのこと。具体的にはインターネットを思い浮かべてくれればよいです)のフリーライダが問題になっているらしい。具体的にはこんな感じ

ネットワークのフリーライダ問題とは、コンテンツ事業者、端的な例ではスカイプ社のIP電話などがそうみたいだ。

スカイプ社のビジネスモデルは、彼らがソフトを配布してユーザがスカイプ・サービスの利用者となり、IP電話サービスを受けるものだ。

その際、スカイプ社もスカイプ・ユーザもネットワークを利用するコストを追加的に負担していない・・・つまりネットワークに「フリーライド」していて、インフラ事業者の収入にはならない。

今後、データが増えれば、設備投資をするのはネットワーク事業者であり、コンテンツ事業者は何の負担もない・・・おかしくないか?

以上のような議論らしい。

通常、フリーライドが問題になるのは、公共財の供給においてである。公共財の定義は、3つの側面からできる。

  1. 等量消費される財
  2. 排除原則の働かない財
  3. 結合供給される財

この3つの側面のうち、サービスを提供する側の立場から重要なのは排除原理が働くか否かであろう。排除原理が働かない場合、受益者負担の原則が成り立たなくなる。まあだから公共財なのだが・・・つまりはフリーライドの問題が出てくるということになる。

今回の場合に当てはめると、消費者にネットワーク利用から得ている利益を申告させ、つまりはスカイプの利用を報告させ、それに応じて費用を負担させようとすれば、消費者は正直には申告しないであろう。

ここにフリーライドの問題が発生する。結果、ネットワークを提供する企業は費用回収の見込みが立たないため、ネットワークへの資源配分が過小になる。

反対に費用負担の問題は目をつむり、利用者からネットワークから得られる利益や必要性だけを申告させ、それに基づき供給されれば、ネットワークに対する資源配分は過大になる。

要するに市場の機能不全が起こっている状況ですね。

ネットワーク上でのサービスの利用が、公共財で問題になるフリーライドとまったく同列で扱えるかという問題もある。つまりネットワークは公共財か?という問題だ。

またIT経済はまだ立ち上がって間もないし、かつ技術革新がいまだ激しく行われている産業でもある。よってビジネス・ルールがこれから整備されていく上での過渡的な問題であるかもしれない。

よって、今回の問題を単純に「フリーライダはけしからん!」と片付けてよいものでもない。なぜならば、ネットワークは今後のIT社会のインフラとして益々その重要度は上がってくるであろうから、あまり厳しく費用の取立てを行うとインターネット上での技術革新を弱めてしまう可能性もある。

一方で、NTTグループ、電力系事業者、Usen等設備を提供する事業者からしてみたら、昨今の値下げ圧力の中、フリーライドとはけしからんという気持ちも分からないでもない。

ユーザの便益と事業の存続可能性を担保できるような落としどころを探って欲しいものである。

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