日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

オペレーションズ・リサーチ学会「評価のOR」研究部会での発表

土曜日は、六本木の政策研究大学院大学において開催された(社)日本オペレーションズ・リサーチ学会常設研究部会「評価のOR」において高嶋君(一応、共著論文なのですが、実際の分析等は高嶋君がほとんどやったものです)が発表しました。

当日の研究部会で扱われたテーマは以下の通りです。

テーマ と講師:
(1) 「DEAを用いた携帯電話事業の自然独占性の測定」
   高嶋裕一 (岩手県立大 学)、野口正人 (情報通信総合研究所)
(2) 「A three-stage approach to measuring the Japanese banking efficiency」
   LIU Junming (政策研究大学院大学
(3) 「Economies of scope and capacity utilization 」  刀根薫 (政策研究大学院大学

我々の発表のオリジナルは情報通信総合研究所発行のInfoCom Reviewに掲載されています。まだ在庫はあると思いますので、興味のある方は、出版担当まで申し込みください。ホームページから申し込みできます。高嶋君のオリジナルファイルはこちらから入手できます。

時間が短かったせいか、質問はあまり出ませんでした。記憶したところで書き出してみると・・・

・ Kを整数として扱っているのはなぜか?

→ これはそもそもK個に分割するという前提で1,2,3というような前提を置いたため。

・ いくつかの変数、データについての質問

高嶋君によると、モデルの考え方自体は、刀根先生の報告とほぼ同じものだったそうです。

私は、まあ、研究会に一応著者の一人とした参加しましたが、発表ではほとんど出番はありませんでした。

さて、当日の研究部会で考えたことをいくつか列挙してみると・・・

・ LIUさんの研究や刀根先生の研究は方法論を問う内容であったと思います。こういう方法論を問う研究の上に我々の仕事が成り立っていることを再度認識しました。基礎研究の重要性を再認識するとともに、そこに時間をかけられない我々にとって、学会での情報収集は、仕事上、やはり重要な位置を占めると思います。

・ 刀根先生の分析は今回はまだ理論的な部分だけでしたが、今後、実証部分も付け加えられて本になるそうです。先生の報告から考えたのは以下のようなことでした。

現在、情報通信産業は、電話の時代と異なり、サービスを提供する際、いくつかのサービスが組み合わさって提供されるようになって来ました。例えば、従来は電話サービスは設備と一体的でした。だから電電公社やKDDが市場で独占的に提供することが効率的でした。ところがインターネットの時代になって、設備としてのネットワーク、ネットワーク上のいろいろな機能、その機能を組み合わせたサービス、そのサービスを利用するための端末という具合です。

設備とサービスは複数の要素機能を介在させることによってやっと使えるという構造に変わりました。そこでは独占的供給を是とする自然独占性に対する疑問や需要の多様性あるいはネットワーク効果の影響などによってどのようなサービス提供形態が最適であるかについては誰にも分からないものになっています。

現状では、ソフトバンクBBに代表される垂直統合型のサービスが優位ではないかと言われていますが、今後もそのような状況が続くかは誰にも分かりません。たまたま現在の市場条件が垂直統合にあっているだけで、垂直統合モデル自体がどれだけ頑健かは誰も検証していないことです。

で、です。刀根先生の報告を聞いていて、「これ、応用できるんちゃうん」と思った次第です。例えば、NTTグループは昨年11月中期経営戦略を出しました。そこではノントラヒックビジネスからの収入を増大させることが明確に述べました。そのビジネスモデルとして、自社(あるいは自グループ)でやるか、アライアンスを組むかを判断しなければいけないわけですが、それに刀根先生のモデルが使えるのではないかと考えた次第です。

まあ、どちらにしても有意義な研究会でした。