日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

数の構造:自然数、整数、有理数、ちょっと実数

数の構造が四則演算(足し算、掛け算、引き算、割り算)と密接に結びついているとはついぞ気がつかなかった。

まず最初は、自然数自然数は0,1,2,3,・・・と続く、我々にもっともなじみの深い数。

自然数が四則演算とどういう関係にあるかというと・・・

足し算:自然数の中で閉じている
引き算:自然数の中で閉じていない
掛け算:自然数の中で閉じている
割り算:自然数の中で閉じていない

ここで自然数同士で演算をしたときにその結果がまた自然数に必ずなるとき、「その演算は、自然数の中で閉じている」という。上記の場合、足し算と掛け算は閉じていて、引き算と割り算は閉じていない。

ちなみに自然数は、N = {1,2,3,・・・}とあらわされる。

さて、実際、我々の消費生活において、足し算や掛け算ばかりで済むわけではない。一ヶ月の給料をもらってくれば、家賃が引かれ、光熱費等公共料金が引かれという具合にどんどん少なくなっていく。そして余分に支出が増えたりすると、その月は、残高ゼロとか場合によっては赤字ということになり、ものの見事に自然数だけでは説明できない状況になってしまう。

そこで登場するのが、整数。整数はZで表される。

Z= {・・・, -3, -2, -1 , 0, 1, 2, 3, ・・・}

自然数にくわえてゼロやマイナスの数まで範囲を拡大すると、上記の問題は解決する。

さて、整数は四則演算についてどのような関係になっているかというと・・・

足し算:整数の中で閉じている
引き算:整数の中で閉じている
掛け算:整数の中で閉じている
割り算:整数の中で閉じていない

という具合に、割り算だけ具合が悪いことになっている。さて割り算では1÷3=1/3と分数で表される。あるいは-4÷7=-4/7なども明らかに整数ではない。

経済活動においても、不都合が起きる。例えば、市場取引の際の交換比率などは整数だけでは解決しない・・・と考えてみれば、ミクロ経済学はモノとモノの交換比率を分析する学問であると言えるであろうから、整数だけでは議論できないことになる。

そこでさらに分数まで扱えるように拡張し、登場するのが有理数である。有理数とは、分母が正の整数で、分子が整数(ゼロやマイナスでもOK)で表される分数である。有理数Qで表される。

有理数まで考えることにより、四則演算をすべて扱えるようになる。このあたりから後ろはまだ自分でよく咀嚼できていないので後日もう一度まとめなおしだなあ。

それで『経済数学教室』を開いたら同じような説明がされていた。こっちは昔々読んだはずなんだが・・・う〜ん、本が泣いている。

有理数の性質:稠密性(xとyを相異なる任意の有理数とするとき、xとyの間には、これらと異なる有理数が少なくとも一つは存在する)

有理数は四則演算に関して閉じているが、有理数だけですべての閉じているわけではない。つまり有理数は稠密であるが、そこにも例外が存在する。例えば√3がその例だ。無理数である。

実数への拡張:有理数無理数をあわせたもの。実数はRで表される。

実数の性質1 実数の集合Rは四則演算に関して閉じている。
実数の性質2 極限の計算について閉じている。
実数の性質3 任意の2つの実数の間で、大小関係(統合の場合も含めて)の比較が出来る。

経済学で議論するとき、よく財の連続性を仮定する。つまり家電製品などは従来、1台、2台、・・・、と離散的?、あるいは自然数の世界なのだけれど、それを前提にして理論を組み立てるのは大変だから、1.2台とか3.5台とかの数字も理論上受け入れてしまい、連続的だと、実数の世界を仮定している(という理解でいいのかな?)。

こういう風に前提を置けば、実数の中で閉じた議論が出来ることになる。だから経済学を理解するためには、実数や場合によっては複素数まで理解しなければいけないということになる(なぜ複素数が出てくるのかはまだ理解できていない)のか・・・

【参考文献】
佐々木宏夫「初歩からの経済数学? 数の世界(その1)」(『経済セミナー』日本評論社、2004年4月)
小山昭雄『経済数学教室1 線型代数の基礎(上)』(岩波書店、1994年)