日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

VTR需要分析:序

さあ、皆さん、これからが本番ですぜ!

ネットワーク外部性(NE)はハイテク製品の世界では当たり前のものである。ネットワークのサイズは相互利用のできないシステム間の標準化競争の結果に影響を与える。当初のネットワークは未来永劫市場に残るわけではない。そのようなダイナミクスは、勝ち残るネットワークを選びたいという消費者の強い欲求が生み出すのである。

NEの研究はITの特徴であるとされてきたし、複数の実証研究がそれを計測した。この論文では古典的なエピソード、米国VTR競争でのVHSとβの事例を取り上げる。VTR市場においてNEは決定的に重要である。理由はフォーマットの成功が補完財の利用可能性に依存しているからである。つまりビデオレンタルショップにおいてあるフォーマットの製品が増えれば増えるほど、そのフォーマットの利用価値は高まる。

この論文はVHSとβの標準化競争におけるNEの役割を調査し、かつNEから得られる消費者便益の規模を計測するものである。

この問題にアプローチするために、最初、VTRの消費者需要を推計する。消費者の選好は新製品市場においては時間がたつにつれておそらく変化している。よって構造変化への対処が必要となるが、この論文では9年間のサンプルをいくつかの期間に分けることによって対応した。

消費者のVTRの購買行動を説明する2つの要因を特定した。ネットワーク要因と非ネットワーク要因である。非ネットワーク要因には価格も含むVTRの属性が入っている。78年から86年の標準化競争では2つの要因のどちらが強かったのであろうか。結果は今回のデータでは、最初の3年間はβがNEの優位性を保持していた。これは創業者の持つ優位性による。しかし消費者は他の属性においてVHSが優れていることを知っていた。非ネットワーク要因がネットワーク要因より強かったために、消費者はVHS方式を好んだのだった。結果的にβのNEの優位性は1981年には消滅していた。

強いNEを持つ産業においては、システム競争の初期の段階でより大きなネットワークを作り上げることが非常に重要である。巨額なプロモーション支出や大幅な割引の提案はネットワーク市場では通常のことである。

βは当初VHSより高価であったことは知られている。βが当初から普及に積極的であった場合、βの市場シェアがどのようになっていたかをシミュレーションした。シミュレーションの結果は実際とは逆のものになった。さらに割引要因を説明することによってこの戦略をSonyがとらなかったことを説明した。これらのシミュレーションで、ネットワーク市場における製品導入初期の段階での価格戦略の有効性が確認された。

さらに、外部性がもたらす消費者余剰を計測するために別の方法でネットワークの重要性を推計した。これはビデオ店から借りてきたテープを見るのための消費者の支払意思額を計測するのと同様である。外部性による余剰は78年に劇的に増えていた。