日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

ネットワーク効果の計測

先日、ネットワーク効果(ないし外部性)という記事を書いた。

そこでは、ネットワーク効果に関するミクロ経済学での扱いの概要を書いた。この記事を読めば、おおよそネットワーク効果の何たるかが想像でき、現在注目されるようになってきた背景もおぼろげに分かるのではなかろうか。

そこで次の段階である。ネットワーク効果の理論的な勉強は別途行うとして、今、近々に必要とされる実証分析に関する検討に入らなければいけない。ネットワーク効果の大きさを計測した文献はあまりない。特に日本語ではほとんどないと言っていい状況で、慶応大学の田中先生が競争政策研究センターにおけるプロジェクトの中でいくつか発表している程度である。

まず方法論のとりまとめとしては

田中辰雄(2001)、「ネットワーク外部性の実証方法について」(公正取引、No606):この文献は主にアンケート調査以外のデータを利用してネットワーク効果の存在およびその大きさを実証した研究事例の紹介である。

がある。実際にネットワーク効果を計測した文献としては、

田中辰雄(2003)、「ネットワーク外部性の経済分析〜外部性下での競争政策についての一案〜」(競争政策研究センター共同研究):スプレットシートやワープロソフト、ルータに関してその外部効果の大きさを計測したものである。
同(2004)「ブロードバンド・サービスの競争実態に関する調査」(競争政策共同研究センター共同研究):IP電話ネットワーク外部性およびBBサービスのスイッチングコストに関して推計している。

がある。

まず最初はこれらの文献の理解から入り、より厳密な議論が出来るようにする必要がある。

スイッチングコストという用語が上記に突然出てきているが、これについてはネットワーク効果との関係でどのように実証分析の中で捉えていくのか、難しい面がある。というようりも、まだ実証分析の分野では未開の分野といってもいいかもしれない。これに関する文献としては、

Farrell, Joseph, Paul Klemperer(2002), Coordination and Lock-In: Competition with Switching Costs and Network Effects(http://www.paulklemperer.org).

CHRISTOPHER R. KNITTEL(1997), Interstate Long Distance Rates: Search Costs, Switching Costs, and Market Power,Review of Industrial Organization 12: 519–536.

Nancy Epling(2002), Price Discrimination amid Heterogeneous Switching Costs: A Competitive Tactic of the Telephony Resale Fringe

曾黎、柘植隆宏(????)、携帯電話市場におけるスイッチングコストの計測−コンジョイント分析による大学生のWTP 調査を通して−。

さて、以上の文献をまず読みながら各概念のおさらいをして、実証分析の過程に入っていくことにしたい。