日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

掲載不可

とあるジャーナルに投稿していた論文が掲載不可となり、戻ってきた。

テーマは「ネットワーク効果とブロードバンド・サービス-情報通信産業における新しい競争政策の視点-」だった。

匿名レフリーから指摘されたのは、以下のとおりである。

不適とした理由を3点あげる。

(1)新規性の欠如

論文中の個々の指摘は誤りではないが、すでに他の文献で指摘されていることであり新規性が見られない。

(2)論旨が不明瞭
個々のトピックの間の関係が不明瞭である。取り上げられているトピックがなぜ取り上げられたのか、全体のなかでの位置づけがわからないことが多い。情報通信産業の特性が雑然と並んでいる印象を受ける。

(3)論拠が明示されていない
論争的な点であるのに、根拠を明示せずに結論を出している場合がある。
例をひとつあげる。p5のネットワークの外部性のところで、業務分野規制(NTTがISPなど上位レイヤーを禁止されていること)を取り上げているが、この業務分野規制はネットワーク外部性というより不可欠設備や優越的設備によるもので、ネットワーク外部性とは直接関係しない。上位レイヤーを統合した方がよいと述べているがその根拠は携帯電話の事例のみで、アカデミックな論文としては十分な根拠とは言えない。

確かに指摘は最もで反論の余地はあまりない。年度末から年度始めの忙しい時期にちょっとした手直しで提出したためこの体たらくになったと考えられる。かなしいいいわけだ。

反省点はやはり論文の構成が稚拙であった点であろうか。つまり今回の論文は結果的に「何を見せるのか」「どのように見せるのか」という点で中途半端に終わってしまったことが大きい。

一番大きいのは、論点がはっきりしていなかった点であろう。今回はネットワーク効果についてもう少し理論的につめるつもりでいたが、そちらは既存の業績に寄せ集めになってしまった。書き上がった論文は、NE自体よりもネットワーク産業の変質を指摘した部分の方が新規性があったと思われるが、そこについては十分な議論が尽くされていなかったし、それと競争政策との関係も十分に検討されていたとはいえないことが問題であった。

もしかしたら構成を変えれば、もうちょっとどうにかなったかと思うが、今振り返ってみるとこの程度のことしかやっていなかったのだろうと、反省しきりである。

掲載不可の査読結果を載せるのは、どうかとも思うが、同じ撤を踏まないようにここに書き留めておく次第だ。

最後に匿名レフリーの方にお詫びとともに感謝する。