日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

ビジネスレポートと学術論文・・・書くということ

先日、とあるところでビジネスレポートと学術論文の話があった。

その時は、とある研究機関の研究員が学術論文はかけるのだが、ビジネスレポートはなかなか上手く書けないというような話ではなかったかと思う。その時は研究員が主語だったので、その研究員の立場(自分も同じ立場なのだが)に立って、研究員としては学術論文は書けるのだから、その上でビジネスレポートを書けるようになるのは、自分の将来の可能性を広げるものだとか言っていたが、あとでよくよく考えてみると、ちょっと片手落ちだったなと思った。

その言い回しには、学術論文が ビジネスレポートより(何かが明確ではないが)勝るものという暗黙の前提があったように思う。果たしてそうだろうか。

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学術論文とビジネスレポートとどちらが勝るなどということはなくて、どちらも読者に対して、自分が言いたいことが正確に伝わるかが重要なのだろうと・・・そして学術論文の読者とビジネスレポートの読者は異なり、当然、各々、要求されることは違ってくるだろうと再考した次第。

対象とする読者を考える場合、学術論文はその専門分野での研究者が読者対象だから、ある意味、手続き(書き方)を形式化しやすい面があり、ビジネスレポートは対象となる読者が多様なのでその多様な読者に対し、臨機応変に対応する必要があろうかと。
そのような見方で考えると、学術論文は書けるが、ビジネスレポートが上手く書けないというのは本当にそうなのだろうか・・・と思う。学術論文の場合、体裁はとっているが、本当に読者に言わんとすることを分かってもらうという点からはどうなのだろう?

ビジネスレポートは、最近はパワーポイントで作られること(パワポをこういう使い方をするのは日本のビジネス界だけ?)も多いが、ビジネスレポートでその読者に自分の言いたいことを理解してもらえるように最大限努力して作られているかというところが大切になるのだろう。
詰まる所、こちらからの質問や意見に対して「自分はそういうつもりで書きました」などという返事が帰ってくるということ自体、読者のことを考えて書いていないことを表しているのではないか。

いかに読み手のことを考えて書くか、それが大切なのだということを改めて気付いたりする。ビジネスレポートは、レポートの報告を受けた人がこれをどのように使うのか、その先にはどのような人がいるのか?そこまで考える必要があるのではないか。

数学文章作法 基礎編 (ちくま学芸文庫)
 

読み手のことを考えながら作文する・・・簡単なようで難しい。この読み手のことを考えながら作文する方法を優しく解説してくれているのが、結城さんのこの本だ。数学を前提にした文章作成のノウハウだが、当然、文系人間の作文についても参考になるのはいうまでもない。

仕事に忙殺され、書くこと、パワポで表現することが疎かになっているそこの人、たまには立ち止まって、こういう本を読んでみてはどうだろうか。200ページに満たない本なのでそんな時時間は取られないだろう。それで報告書や資料の品質が格段に向上するとなれば読まない手はない。さらに派生効果として、対人コミュニケーションの改善にも役立つのではないかとも思う。

数学文章作法 推敲編 (ちくま学芸文庫)
 

そして基礎編を読んだら、こちらの推敲編も読むといいだろう・・・と勧めておきながら、こちらは自分もまだ読んでいない。

新聞雑誌、書籍の他に、Webでの情報発信が重要になっている今日、多くの人がもう一度、文章を書くということの大切さを考えてもいいのではなかろうか。そうすることで読み手としてのスキルも向上するだろう。

最初の問いに戻れば、学術論文は書けるけどビジネスレポートは・・・という見方はしなくなるのではなかろうか。問題はもっと違うところにあるのだと。

・・・とここまで書いて、この文章は自分の言わんとする事が、数少ない読み手に上手く伝わるのだろうか?

心もとない^^;