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樋口毅宏『タモリ論』:う〜ん、こういう本の読み方は難しい>

前回の村上春樹の一冊、その前のビートたけしの一冊・・・それに続いて読んだこの本・・・読後感は複雑だ。

たけしの一冊は自分の経験や自分そのもののことを通していろいろな「間」について語る一冊。春樹の一冊は、マラソンあるいは走るということを通して自分のことを語った一冊。さて、これはどういう一冊か・・・たけしや春樹のように少なくとも著者=自分のことは語っていないように読める・・・部分的には感想的に出てくるけど、それはこの本の主題ではないだろう。

著者や編集者の考えた主題は本の帯にある「革命的芸人論」にあるのだろうと思う(売らんがための帯だったら笑止千万)。こういうのに惹かれたのもあるだろう・・・読み終えた今、さてどういう風に位置づけるべきかがよく分からない。


4106105276 タモリ論 (新潮新書)
樋口 毅宏
新潮社  2013-07-13


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目次は以下の通り。

目次を見ればお分かりのように、タモリのことだけを書いたものではない。タモリ論というより、80年代から現在まで続く、タモリ、たけし、さんまを中心としたお笑いの世界を描写している内容だ(表層的に)。もちろんタモリについて語られている部分が一番多いし、いかにタモリが独特の存在であったかも書いてあるんだけど、タモリ論というほど、そして革命的芸人論というほど深く論じられていない(と僕には読めるのは僕の商売柄なのかもしれない)。

一作家が日ごろ感じている、一部考えている、タモリを中心とした現在のお笑いの状況について、そして彼らを発掘したフジテレビ・・・ということは、お笑いとテレビの関係について、タモリ笑っていいとも!を中心に、そこにたけしとさんまをちりばめて、著者の思いをいろいろ書き込めたって感じだろうか。

キワモノだったタモリ笑っていいとも!というお昼の帯番組に登場し、視聴者受け入れられ、30年にわたり続けられたのはなぜか?・・・それを語ることで革命的芸人論にするにはどうしたらなるのか?タモリがどういう点で革命的だったのか・・・笑っていいとも!だけ?・・・いや、書いてあるんだよいろいろ・・・でも革命的芸人論とまでは突き詰めていないように読めた。

NHKのばらえていテレビファソラシドという番組は永六輔が当時キワモノだったタモリをNHKに出すために企画した番組だったと聞いたことがある。当時キワモノだったタモリ永六輔が何を感じとり、キワモノの対局にあるTV局NHKにタモリを引っ張り出したか?他にも過去にあった名番組「今夜は最高」とか現在も続いているタモリ倶楽部とかもっといろいろ著者の目を通して書き加えるべき視点はあったように思える。

すっきり読めないからダメというわけでなく、この本を読み終えた読者がどう思索を広げていくかを著者から委ねられているのだと考えれば、この本こそが革命的芸人論の(タモリ的意味での)キワモノに位置づけられるのかもしれない。

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