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村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』:いつでも持ち歩いて何回も読み返したい一冊

著者がランニングをしていることはかなり有名だったらしいが僕は知らなかった。大磯に住んでいた時は、太平洋岸自転車道でトライアスロンのバイクの練習をしていたらしい。これも知らなかった。大磯の住人だった僕も当然あそこはよく自転車で走った道だ。こういうところからも親近感を覚える。

走ることを書いても、春樹さんの文章はいつもの春樹さんの文章なのだ・・・当たり前だ。その文体で走ることについて語る・・・ちょっとくどいかとも思ったけど、読んでいると全然そんなことない。むしろ引き込まれるように、うなずきながら読んでしまう。

でも読み上げるには時間がかかった・・・1年ぐらい?・・・なぜかというと老眼が進んで文庫本の文字を読むのがつらかったからww 最近アンチャン茶なるものを飲むようになり、それがちょっと改善した気がするものの、本当のところはどうなのだろう・・・と思いながらも無事読了。本当、久しぶりに文庫本を読了した。長い長いウルトラマラソンを完走するとこんな感じだろうかなどと勝手な想像をして、今、ブログにこの記事を書いている。


4167502100 走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
村上 春樹
文藝春秋  2010-06-10


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さて本の内容だが、章立ては以下の通り。

  • まえがき 選択事項としての苦しみ
  • 第一章 誰にミックジャガーを笑うことができるだろうか?
  • 第二章 人はどのようにして走る小説家になるのか
  • 第三章 真夏のアテネで最初の42キロを走る
  • 第四章 僕は小説を書く方法の多くを、道路を毎朝走ることから学んできた
  • 第五章 もしそのころの僕が、長いポニーテールを持っていたとしても
  • 第六章 もう誰もテーブルを叩かず、だれもコップを投げなかった
  • 第七章 ニューヨークの秋
  • 第八章 死ぬまで18歳
  • 第九章 少なくとも最後まで歩かなかった
  • あとがき 世界中の路上で

あとがきによると、以上の文章を春樹さんは2005年から2006年にかけて書いたそうだ。小説でもなく、「メモワール」として書いたということでかなり念入りにチェックしながら書いたらしい。

僕にとってはメモワールでもなんでもいいのだが、中に書いてあることは走ることに対して痛く僕を刺激してくれる内容だった。月間走行距離が目安として300キロ!、マラソン前の練習では最大360キロまで走り込んでいる・・・しかも真夏の8月に。

僕には考えられない真夏の300キロ越え・・・どうしてそんなに走れるんだろうと。しかも初の42キロを真夏のギリシャで走っているし・・・そりゃ、今の僕より若干若い年齢だったかもしれないけれど、それでも真夏にそれだけ走れるとは羨ましいとしかいいようのない思いが頭の中を駆け巡った。

そんな春樹さんにもスランプ?があったことも書いてある。みんなそれぞれの動機で走るし、いろんなきっかけでスランプになる。長期間になるときもあるし、週のうちにスランプと好調とが繰り返されることもある。走ることもそんな単純じゃあないんだと改めて思う。

それから春樹さんがトライアスロンまで走っていたとは驚きだった。僕はスイムがダメなので、トライアスロンは無理・・・と自分で勝手に決め込んでいる・・・恐らく今後も。

走ることだけでも、3種目をやることでも地道な努力が面白いのだということをこの本を読むと改めて感じさせてくれる。小説の書く方法も走ることから学んだとあるが、僕はどうだろうか・・・研究の方法を走ることから学んだ部分はあるのだろうか・・・と考えると、分からないww

この本は、実は走ることを通してみた、春樹さんの小説家論の部分もあるのかと思う。自分はそれを自分の仕事と重ねる部分もあるけど、どうなんだろうなって・・・走ることはストレスの発散になって、気分転換になるけど、研究の方法まで考えることはあるのか・・・今後は走りながら考えてみよう。

本書を読むとレースに出るかどうかはランナーそれぞれだろうけど、自分としてはなるべく毎日、じっくりと自分のペースを守りながら、年をとっても走り続けていたいとやはり思う(これは春樹さんと同じで自分はプロのランナーではないから)。いつも鞄の中に忍ばせて、走ることを思い出したいとき読みたい本だ。

多くのランナーの方はすでに本書を読まれていることだろうと思う。僕も遅ればせながらその仲間入りができた(ことにどれだけの意味があるかはわからないが)わけで、それだけで自分は満足なのでした。

一度読んだだけではもったいないので、自分に考える素材を与えてくれるだけでもありがたいこの本を明日あたり僕は早くも読み返しているだろう。

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