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養老孟司:バカの壁

長らく積読になっていた「バカの壁」。最近、軽い読み物を軽く読めるようになり、その流れにのってついでに読んでみることにした。

最初の方を読んだ感じでは、コミュニケーション論や認識論の話、所詮人間の理解なんて不完全なのだ、認識だってそうだ、例として科学はそんなに絶対的なものではないなどなど・・・という感じがします。それをごく分かりやすく柔らかい文章で書いてあるって感じ。

構成は以下のとおり。

  • 第一章 「バカの壁」とは何か
  • 第二章 脳の中の係数
  • 第三章 「個性を伸ばせ」という欺瞞
  • 第四章 万物流転、情報不変
  • 第五章 無意識・身体・共同体
  • 第六章 バカの脳
  • 第七章 教育の怪しさ
  • 第八章 一元論を超えて

本書が発刊されたのが2003年。僕が読んでいるのが90刷で2007年の発刊。大ベストセラーだった。そして2010年の今の混沌とした時代だから、なおさら大切なことが書いてあるような感じがします。じっくり考えるにはいい材料という印象。

4106100037 バカの壁 (新潮新書)
養老 孟司
新潮社  2003-04-10


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第二章では簡単な数学の一次方程式(y=ax)で人の物事への関心度を解説します。a=0は無関心、a>0はポジティブに感心あり、a<0はネガティブ。そうやって考えると、a=0が一番手に負えない。a<0はネガティブだが、関心は持っているので変わる可能性がある。この関係を現実の世界に照らしてみると世の中がどう見えるかということが解説してあります。

第三章は、日本の教育がなぜダメになったのかが分かります。個性と社会性というそもそも相反するものを対置させたところに問題がある。個性は生まれながらみんな持っているもので、その個性的な人間どもで社会を形成するために社会性を身に着けさせることが教育。そこを履き違えて個性を伸ばす教育とやったところに問題が。そこで言っている個性とはなにか・・・多くの人はよく吟味せずに受け入れてしまった・・・現代日本の悲劇をもたらした原因の一つが書かれていると思います。

第四章は、さらに話を進めて、変わらない情報、変わる人間ということを吟味します。日本人は人間が時とともに変化していく、社会が変わっていくということを理解していた・・・それは方丈記平家物語を読んでも分かる。しかも最初に出てくる。それがいつのころからか、変わらぬは人間、変わる情報という具合になってしまった。これによってどういう問題が起こっているか。

人と情報、両者の本質的な特性を比較して考えれば、大きく見て変わらないのがどちらであるかは明らかでしょう。だから、若い人には個性的であれなんていうふうに言わないで、人の気持ちが分かるようになれというべきだというのです。

むしろ放っておいたって個性的なんだということが大事なのです。(69ページ)

第五章以下も身近な例を上げ、現代社会の矛盾を指摘していく。常識を持つということがいかに大切なことか、常識を身につけるには経験が大切だ。それから人の気持ちをいかにくみ取れるようになれるかなど、何が現代社会に必要なのかを200ページのこの著書の中で述べている。

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