読み終わるまで、結構時間がかかった・・・読書時間がなかなかとれなくてこうなったということで、内容はケインズとシュンペーターという二大経済学者について書かれた本だ。
大恐慌時代から大戦、そして戦後処理の時代を生きた二人の代表的著作を中心に経済学、特にケインズの経済学ではマクロ経済学がどのような学問で、何を研究対象としてきたか、それはどのように迎え入れられたかなどが語られ、現代におけるケインズ経済学の位置づけ・・・あるいは役割を考えさせてくれる。
一方、シュンペーターについては経済発展の理論が彼の集大成であったこと、それ以降の著作はあまりパッとしなかったこと、それは欧米でも、日本国内でもそうであったことが語られていく。全般的にシュンペーターについての記述はあまり多くない。
著者は最終的に、ケインズの経済学とシュンペーターのイノベーションの重要性という視点は対立するものではなく、両方とも重要であることを指摘する。つまり需要の飽和が有効需要を減らし、失業などの不況の原因になるが、それを打ち破る新たな有効需要を作り出すものはイノベーションに他ならないと。
いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ―有効需要とイノベーションの経済学 ダイヤモンド社 2009-02-27 by G-Tools |
計量経済学に対する評価も二人は正反対だった。Econometric Societyの設立にコミットしたシュンペーター、計量経済学そのものに懐疑的ないし反対の立場だったケインズ。ケインズは、経済学は物理学などとは違い再現性のないことを理由に実証分析に反対した。おそらくこのことが経済モデルによる予測は役に立たず、事後的にその原因を分析するのに適していると言われる理由でもあろう。だからと言ってデータを使った分析、計量経済学に意味がないとは思わないが、ケインズは支持しなかったようだ。
本書は雑誌の連載をまとめたものであり、一章一章がコンパクトで読みやすい。全体としては19章からなっており、ケインズとシュンペーターを中心に大恐慌以降、マクロ経済学の動向について書かれたもので、最近の景気の動向やその対策の視点を提供する経済学というものに興味のある人にはお薦めの一冊だろう。