国の形を整え、東地中海を手に入れ、貿易国として確立したヴェネツィア。ヴェネツィアの海洋貿易はどのような仕組みで行われていたのか・・・第四話は経済・ビジネスの話だ。
交易市場での商売のやり方・・・商品の仕入れから売買、それに必要な資金調達の話から、定期航路の整備とガレー船と帆船の使い分け、それから船の航行を大きく変えた羅針盤、航海図とその早見表、銀行制度の成立にともなう取引の改善・・・1000年にわたり地中海地方に君臨したヴェネツィアの経済制度が紹介されている。
惜しむらくは、塩野さんがご自身でも書かれている通り、経済についてはシロウトで経済用語をうまく使いこなせていないところがあり、若干内容が分かりずらいところであろうか。
第五話は政治の話だ。君主制にもならず共和制を維持しながら、国体を維持し続けてきたヴェネツィア。その背景には、貿易で生計を立てるしかないヴェネツィアという国の事情が多いに反映されていたことが分かる。優先されるべきは経済合理主義で、現実主義だった。自分たちが明日の食事を確保するため、将来路頭に迷わないためには何を大切にすべきか、それを守るために必要な政治体制はどのようなものか・・・そのような背景からヴェネツィアの統治組織はできている。
第一巻が、インフラや国土の成り立ちの話、そしてこの第二巻が経済と政治の仕組みの話、これでヴェネツィアの基本的な構造は理解したことになるのであろう。第三巻以降はこの時代の国際社会の中でいかに生き抜いてきたかが物語として展開されている・・・ようだ。
第二巻の内容は以下のとおり。
- 第四話 ヴェニスの商人
- 第五話 政治の技術
海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫) 新潮社 2009-05-28 by G-Tools |