日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

総務省:情報通信白書(平成20年版)

平成20年版情報通信白書(情報通信に関する現状報告)が先月公表された。

今年の白書は特集テーマが「活力あるユビキタスネット社会の実現」で、平成18年版から3年連続で「ユビキタス」という言葉がキーワードとして使われている。昨年までがエコノミー、つまり経済との関係で分析されていたが、今年はもう少し視野を広げ社会と結び付けている。

内容は、第一節で、地域経済との関係、第二節で国際競争力との関係、第三節で国民生活との関係で述べられており、どの部分も問題提起に富む内容となっている。今年も去年に引き続き第一節の中の「情報通信による地域経済成長」の部分のお手伝いをさせていただいた。

さて、下でいろいろ書いているが、今年の白書で注目すべきは以下の点であろう。

  • 地域経済に注目したとき、ICTは成長に対してキーになるが、克服しなければいけない課題も同時に存在することを指摘していること。
  • 日本企業の競争力の向上に関していくつかのポイントが指摘されていること。

特に2点目は重要だと思う。

4324085420 情報通信白書 平成20年版
総務省
ぎょうせい 2008-07-23


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第一節ではまず地域経済とICTの関係を定量的に把握し、ICTが地域の経済成長にプラスに貢献する事を都道府県別に推定された生産関数に基づきシミュレーションを行い、明らかにしている。

その上でディジタルディバイドの状況が整理され、ディバイドが解消されていない現実を明らかにする。但し、ICT、特にサービス部分が普及期であることを考えると現状では過度に問題視すべき事ではないかもしれない。

次の自治体によるICTの活用状況を取りまとめは、都市規模の大きさとICTの活用はある程度関係がありそうだが、ICTをうまく活用している都市は政令指定都市クラス以外の都市でも数多くある。地域の弱点を補い強みを伸ばすための手段としてICTは可能性を持つ。その点について自治体の活用状況を例にさまざまな視点から分析しており、興味深い現状が報告されいている。

第二節国際競争力に関する分析では、世界市場における成長と各種ICT製品のシェアが取り上げられ、日本製品の現状が明らかにされる。そこで明らかにされていることは、欧米の企業が国内外を一体的な市場として行動しているのに対して、日本企業が国内市場と海外市場を別市場として行動している現実が浮き彫りにされる。

またICT企業の設立年を国際比較してみると、日本においては1960年代以降、新たな参入企業が現れていない、また米国ICT企業の創業者の経歴などを示し、日本企業の国際競争力強化のためには資金、人材、R&Dの面で対応強化の必要性が述べられる。実は米国のここ最近のICT企業(AmazonGoogle、Yahooなど)の創業者は20歳前後であることも付け加えておいてもいいのではないかと思う(日本は若年者の若年者が置かれている現状をもう少し直視する必要がろう)。

この第二節で国際競争力の観点から分析されている日本企業の現状は今後、経済の活性化を実現し、経済成長を本物のものにするために企業が何をしなければいけないか、いろいろな問題点が指摘してあると読める。

第三節は、国民生活にどれだけICTが普及浸透してきているかがまとめられている。

今年の情報通信白書は、地域経済の成長にもICTが有効であることを明らかにした点、国際というより企業の競争力という視点から今の日本企業に何が足らないのかを示唆している点、そして現状の経済社会の変化は国民生活に浸透してきているICTも貢献している点などを明らかにしており、現状を理解し、今後の方向性を考えるのに非常に参考になる内容となっている。

分析に携わった一メンバーとして多くの人が読んでくれればと思う。

なお情報通信白書は、総務省ここからもダウンロードできる。読むにはアクロバットリーダーが必要だ。

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