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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

高杉 良:小説 日本興業銀行(第一部)

経済活動が円滑に行われるためになくてはならない金融業界。その中にも証券業界のような直接金融と銀行業界の間接金融がある。

日本興業銀行は、その間接金融の銀行の中でもさらに特殊銀行長期信用銀行というカテゴリに属し、企業への融資を中心とした銀行であった。そのため国民に広く知られる都市銀行とは異なった。僕自身も興銀についてはほとんど知らなかった。学生の頃、金融論の授業でちょっと名前が出て知っていた程度だった。最近では知人が興銀出身であったりで、ちょっと身近になったって感じ。

今回、本書を読んだのは、昨年あたりからのマイブームである、幕末明治維新期や戦後復興期の日本経済についていろいろ読んでいる関心の中に位置づけられる。戦前から戦後、特に戦後にかけて興銀が果たした役割はどういうものだったのかについて知りたくなって手に取った次第。

4061847767 小説 日本興業銀行〈第1部〉 (講談社文庫)
高杉 良
講談社 1990-10


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この第一部は、導入部で山一證券に対する日銀特融について物語が展開し、その圧巻は特融の決定したシーンの田中角栄さんの凄さだろう。すべて計算しつくされたような、プロの作家でもあれほどの筋書きを描くのは難しいだろうストーリーを描き、そのとおりにしてしまう田中角栄という人の凄さが伝わってくる。角栄さんは学生の頃、一度だけ、直接話を聞く機会があったが、なんともいえない雰囲気を持ち、聞く人を知らぬ間に酔わせてしまうような話術であったのを覚えている。

その後、小説は、戦後のGHQによる興銀に対する政策がどうなるかという話が中心に進められ、その中での総裁人事など重要決定事項が描かれ、人間模様や興銀を戦後どうしていくのかについて関係者がいかに苦労して考えていたかが書かれており、戦後の日本経済史を垣間見ることができる。

目次は以下のとおり。

  • 第一章 日銀特融
  • 第二章 二人の大物総裁
  • 第三章 総辞職
  • 第四章 再建への険しい道
  • 第五章 四十五日の総裁
  • 第六章 GHQとの難交渉

さて、全5冊の本書・・・これからじっくり読んでいこうと思う。

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