前著「下山事件 最後の証言」を読んだのは今から約2年前、2005年11月のことだった。あの頃は、事件のスケールに圧倒され、新しい情報が発掘され、今回の完全版が出るとは思わなかった。
2005年に出た単行本を読んだときのあのなんとも言えない感覚は今でも覚えている。
下山事件最後の証言 完全版 (祥伝社文庫 し 8-3) 柴田 哲孝 祥伝社 2007-07 by G-Tools |
今回の完全版は前著が出版されて以降、著者の柴田氏が新たに得られた情報を加味し、加筆修正している訳だが、非常にスケールが大きい話がさらに新たな情報で補強されており、終戦直後の混乱した状況と、その背後にあるさまざまな力の存在を描き出している。(著者のブログの記事によると、加筆して増えたページ数は150枚になるそうだ。)
目次は以下のとおり。
- 序章
- 血族
- 証言
- 総帥・矢板玄
- 検証
- 下山総裁はなぜ殺されたのか
- 慟哭
どの章も興味深く読める。どこが一番面白くなるかは読者の興味がどこにあるかによるだろう。僕はやはりあの時代における下山事件の位置づけに興味があったので後半部分を興味深く読んだ。読み応えあったよ^^
著者は具体的犯人を特定しているが、本書ではその名前が直接示されることはなく、今後もないだろう。しかし恐らく本書を丹念に読み進めると、その背景から具体的犯人像が明確になる。
僕はそこまで丹念に読まなかった・・・というより、一度や二度読んだぐらいでは複雑な背景や人物の相関をきちっと理解することは無理だというのが正直なところ。
さて、この感想文を書いてから、他の人の感想や評価を見てみると、やはり書きっぷりについては辛口の批評が書かれているところがあった。最初は書かなかったが、やはり僕だけではなかったのかということで、本書を読んで感じたもう一つのところを書くと・・・
本書で扱う下山事件はそもそも複雑なのだけれど、著者の文章、書きっぷりも複雑だ。あるいは書いている本人が確信を持って書いているからだろうけど、ちょっと飛躍があるのではないかと思えるような記述もある。そういうところがまた読んでいる者を戸惑わせる・・・少なくとも僕は戸惑った・・・違和感を覚えながら読んでいた。
・・・とはいうものの、そういう点を考慮しながら読めば、内容は非常に興味のあるものであり、いろいろと考えさせてくれる作品であることに変わりはない。お薦めの一冊である。
また何年か後に読み返してみようと思う。