市場支配力を議論する必要があり、買ってみた次第。
著者は、UCバークレイのJeffrey M. Perloffと同じくUCバークレイのLarry S. Karp、そしてAmerican UniversityのAmos Golanだ。PerloffとKarpは農業資源学部の先生で、農産物等の市場支配力の実証分析が多いように見える。一方、Golanは統計や計量経済学が専門のようだ。
市場支配力の話題には直接関係内が、彼らのホームページにはMaximum Entropy Econometricsなる文字が見え、なんだろうとよく見るとそれは書名だった。しかしMaximum Entropy Econometricsとは始めて知った。それに関するホームページもあった。ちょっと見たところでは情報量統計学やベイズ統計学に近いものであろうかと見られる。研究テーマ(あるいは分野)は広大だ。
本書は実証的アプローチで市場支配力を分析してきた彼らの集大成といったところだろう。
Estimating Market Power and Strategies Jeffrey M. Perloff Larry S. Karp Amos Golan Cambridge University Press 2007-06-30 by G-Tools |
さて、内容はというと・・・
- 概要
- SCPフレーム
- 市場支配力の産業モデル
- 差別化された生産物の構造モデル
- 動学的推定モデルの戦略的理由
- 経済的基礎条件を伴う動学ゲーム
- 経済的基礎条件を伴う動学ゲームの推定
- LQモデルを利用した市場支配力の推定
- 戦略の推定:理論
- 戦略の推定:事例研究
という章立てになっている。
前書きを見ると「本書の目的は、限界費用以上に高価格を設定する能力、すなわち市場支配力に関する古今東西の様々な実証モデルの推定方法を示すことになる」と書いてある。
つまりこの本を読めば、ごく最近までの市場支配力の推定方法が分かるというところだろう。ついでに第一章の概要をパラパラ見てみた。
- 市場支配力と戦略の推定に関するテクニックを説明し、比較する
- 最初は静学モデルから動学モデルに拡張し、最後に企業の戦略が市場支配力を如何に決めるかを検証する
- 本書で取り上げる研究は、観測された変数および観測されない企業戦略に基づいてなされる
ということについて書いてあるらしい。さらに読むと以下のようなことらしい。
本書を通して注目する3つの問
- 企業あるいは産業はどの程度市場支配力を行使するのか
- 市場支配力を決める主要な要因は何か?
- 企業の戦略は市場支配力をどのように決めるか?
市場支配力を測る指標としてラーナー指数があるがここから議論が始まる。
第2章ではSCPパラダイムが市場支配力の議論にどのように関係しているのかを明らかにする。第3,4章では静学モデルでの検討が行なわれ、SCP研究における仮定を否定することから議論しはじまる。
次は動学モデル。これには第5章から第8章までがあてられる。静学モデルの限界・・・すなわち価格と限界費用が観察されても、観測不可能な機会費用やオプションバリューに依存する市場支配力の程度は決定できない。これらの章では動学的構造モデルを利用し、問題1と2の回答を検証する。そして動学的な視点が重要であることが明らかにされる。
残りの第9章、第10章では、需要関数、費用関数に沿って問3に直接答える企業戦略を推定する方法を議論する。
ということだそうです。文章は直訳的で分かりづらく、誤理解もあるかもしれませんが、大体以上のような内容です。