日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

2007年、ブロードバンド市場はターニングポイントとなる

2007年、ブロードバンド市場はどうなるであろうか。

光ファイバ・サービスは2005年度より本格的に立ち上がり、純増ベースではADSLやケーブル・インターネットを抜くまでになった。その勢いのまま2006年も光ファイバの伸びは順調に進んでいるようである。

その背景にはNTTの中期経営戦略において2010年を目途に3000万ユーザに光ファイバを提供しくことが明確に示されたことが大きい。

中期戦略に基づき光ファイバを主力商品として売っているNTT東日本NTT西日本はそれがADSLの純増数を凌駕し、さらにADSLは純減となっているようである。国内市場全体で見ても、ADSLは四半期ベースで純減となり、NTTグループ以外の企業も減少基調になってきていると見られる。

そのような中でソフトバンクはいまだにADSLサービスを中心に売っており、本格的に光ファイバ市場に出てきていない。

参入当初のADSL市場での攻勢、現行のブロードバンド市場が、加入動向を見る限り、光ファイバ中心になってきている状況を考えると、当然500万ヤフーBBユーザを囲いこむためにも、さらにブロードバンド市場においてシェアをさらに勝ち取るためにも、ADSL参入時と同様、ソフトバンクはいつか光ファイバを積極展開してくると見られていたが、その気配はいまだ無い。

ソフトバンクはなぜ光ファイバ市場に本格的に参入してこないのであろうか。その理由は以下の2点にあると考えられる。

  1. 需要側の要因:ブロードバンド市場において光ファイバがユーザから絶対的な支持を受けている訳ではない。
  2. 供給側の要因:光ファイバを提供するコストが現行のADSLサービスより高い。

需要側の要因は、ソフトバンク社長の孫さんが以前から指摘しているところだ。光ファイバの供給能力の優れた点(上り下り対称伝送でかつ高速度、安定性)は誰もが認めるところであるものの、それを活かせるキラー・アプリケーション、コンテンツがいまだ見つからないという点である。

このような状況が変わらない限り、つまりブロードバンド・サービスは光ファイバでないと絶対に困るという状況にならない限り、自らのユーザが他社に乗り換えるリスクを伴う、光ファイバへのマイグレーション戦略はとらないであろう。

供給側の要因は、ソフトバンクの財務状況としてどうかという点である。ソフトバンクADSLサービスにかかるコストとそれから得られる収入から考えると解る。

需要側の要因が活きている限りは、ADSLよりコスト的に高い光ファイバを自社のユーザに勧めることは、ユーザの信用を裏切る事になる。さらにキラー・アプリケーション、コンテンツがないから、光ファイバの月額定額料金以外の部分でARPUを上げることは難しい。よってブロードバンドサービスを提供するのに、現行のADSLサービス以上のコストはかけられないことになる。

上記2点から出てくる答えは、いくらNTTグループ光ファイバサービスでシェアを伸ばそうとしても、自社のADSLユーザが大挙して流出しない限り、また光ファイバの提供コストがADSL波にならない限り、ソフトバンクとしては光ファイバサービスに積極的に参入するインセンティブは持たないということである。

否、孫さんは光ファイバに積極的に出たいのかもしれない、しかし財務面からみれば、今、ソフトバンク光ファイバに対し、NTTグループのようにリスクをとって先行投資をする余裕はないというところかもしれない(だから孫さんはことあるごとに光ファイバの卸料金の値下げを主張するのだ)。

以上より、2007年当初もブロードバンド市場は光ファイバサービスが中心に展開し、競争はNTTグループ対電力系(KDDI含む)グループという構図で展開する。

そして2007年は光ファイバがNTTの中期戦略で描くように日本のブロードバンド市場の中心的サービスに脱皮できるかどうかのターニングポイントになると考えられる。その鍵を握るのはNTTグループ光ファイバとしてのメリットをユーザにどのように訴求できるかであり、それに影響されるソフトバンクの戦略の動向である。

そのメリットを明確にユーザに訴求できない今のままで推移し、ソフトバンクが現状のADSL中心の戦略を維持し、光ファイバ競争が更に促進されない場合、ブロードバンド市場の中で光ファイバキャズムに陥る可能性が高い。キャズムに陥らないまでも、2010年に3000万を達成する事は難しくなるであろう。

2007年、ブロードバンド市場はターニングポイントを迎える。

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