今話題の経済学の啓蒙書であるヤバい経済学・・・読み終わりました。
人によりいろいろな視点から読むので評価はいろいろあるとは思いますが、僕にとっては面白い本でした。
以前の記事(お寺の経済学)でも書いたように、従来、需要と供給という2種類の言葉を知っていればオウムでも経済学者になれると揶揄された経済学は、インセンティブという視点を取り入れることによってその応用範囲を大きく広げることになり、現在、その方向に大きく様変わりしているということになるのでしょう。
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する スティーヴン・レヴィット スティーヴン・ダブナー 望月 衛 東洋経済新報社 2006-04-28 by G-Tools |
インセンティブは
- 経済的
- 社会的
- 道徳的
という3つの側面から捉えられることが出来て、これまでの経済学は市場メカニズムを描写することによって経済的インセンティブを扱い、他の部分(社会的、道徳的)は他の事象が等しければということで捨象してきた・・・というのが僕の理解。
最近のゲーム論の発達はその部分を明確に取り入れることを可能にしてきている。そのような研究の代表が金子守著『ゲーム論家の酔夢譚:詩の饗宴』と言える。
経済学はその分析対象を、インセンティブをキーワードにして、社会的、道徳的な側面まで広がる可能性が出てきている。これは社会学や心理学、社会心理学の領域と当然重なる部分が出てくるわけで、現在、注目されている行動経済学もこの方面を分析するものと位置づけることが出来るだろう。今後、この方面でどのような分析出てくるかが楽しみだ。
本書にはいろいろ面白いことが書いてあったけど、僕が一番印象に残っているのは
正直な話、回帰分析は科学というより職人技だ(本書206ページ)
という一文。確かにそうだと思う。だから大きな武器にもなるし、使い方を間違えると「ありゃ?」ということになる。回帰分析の解説書を読んだだけでは使いこなせない。経験がモノをいう。何事も簡単にはいかないもの。
経済学というより社会科学を専攻する人、興味のある人は是非呼んでみて欲しい一冊です。そしていろいろ書いてある面白いこと、それは読んでからのお楽しみということで^^